僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「彗ーっ、これ解いてよ!」


教壇から凪が叫ぶと、彗は左隣に座ってるはずの凪がいないことにやっと気付いたらしい。そのまま目を細め、黒板を見る彗は眉を寄せた。


「……それ、昨日教えたじゃん」

「いやいや、嘘でしょ」

「ないない」と覚えてないことを否定したいのか、凪は手を左右に振る。


「……公式忘れたんでしょ」


皮肉めいたように言った彗に凪はうぐっと言い淀み、視線を泳がせた。


あたしも含めて、どうなるんだろうとふたりの様子を窺っていたクラスメイトは、凪を見たり彗を見たり忙しない。


「忘れた、かも……」


そう呟いた凪に彗は小さく溜め息を吐いたようで。


彗は席から立ち上がり、祠稀と「凪って本当どうしようもない」とか、一言二言話して黒板の前へ向かった。