「凪。明日さ、喫茶店行こうよ」
再び数学の教科書を開いた凪に向かって言うと、化粧っ気がなくなった猫目が丸くなった。
「ああ……例の珈琲一杯サービス券の?」
「うん」
颯輔さんがくれた券は、まだ俺の手元にある。
凪は少し考えるように宙を見上げ、首を傾げるようにして隣に座る俺へ視線を戻した。
「ケーキとかあった?」
「うん、行く?」
尋ねると、凪はすぐに「いいよー」と明るい返事を返してくれる。
「ケーキかー。最近食べてないなー。何食べようっ」
元気になった凪に頬を緩めながら、ペンを持つ。
「じゃ、ここから。ちゃんと聞いててね」
「うへぇ……分かった」
数学の教科書をふたりの真ん中に置いて、凪に勉強を教えた。
――颯輔さん。俺は今日も、笑って過ごしてるよ。



