僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「彗だって越してきたばっかで、欲しいものあるでしょ?」

「ああ……うん、そうかも」

「じゃあ早く荷物置いてっ! ちゃっちゃと行くよ!」


そう言うと、彗は自分の部屋になるドアを開けて中に入った。あたしはそれを見てから、ふたつのグラスを持って彗の部屋に向かう。


「ねぇ彗。業者さん夕方に来るんだよね? なにをどこに置くとか、考えときなね?」


持ってきたトランクを開けていた彗に緑茶を差し出す。彗は「ありがと」と受け取りながら考えるように眉を寄せた。


「……お任せでいいよ」

「ふはっ! めんどくさがりは相変わらずだね」


おかしくなって笑うと、彗も垂れ目がちな瞳を細める。


昔の面影がある笑顔は、必然的に胸をジンワリと熱くさせた。


懐かしいという気持ち以外に、人の温かさを久しぶりに感じられたから。


「……彗」


呼べば、応える瞳。手を伸ばせば届く距離にある、温もり。


「身長どのくらい?」

「……さぁ。180だったかな」


なんでいきなりそんな質問?とでも思っているのか、首を傾げる彗にあたしはまた笑った。


はっきりと感じるんだ。


きっと今日から、毎日が楽しくなるって。