「待てコラ! 最後までやらせろっつーの!」


リビングへ入ってきた彗は両手で頭を押さえている。その後ろから祠稀が眉を吊り上げて彗の襟元を掴んだ。


「……何してんの?」

「祠稀がめんどくさい」

「めんどくさいってなんだよ! たまには髪くらいちゃんとしろ!」

「ああ、寝癖直してもらってたの? なんでもいいから早く着替えてきなよ」


凪は呆れたようにそう言って、彗はショックを受けたように眉を下げる。彗のいつもと違う髪型は、きっと祠稀にいじられたんだ。


大抵いつも外ハネになってる彗の髪が、今日は左サイドだけコーンロウみたいになってる。


「ひどい……毛根痛い……もうやだ」

「だあ! あとちょっとなんだから我慢しろ!」


拒否する彗と、成し遂げようとする祠稀の会話でリビングは騒がしくなって、あたしは凪と笑いながら朝食の準備を続けた。


彗は嫌がってるみたいだけど、あたしの胸は温かくなる。こんな風にまた、騒がしい朝が迎えられたから。