あの頃を、今までを想えば何秒、何分経ったか分からないけれど、すぐに大きな手があたしの頬に触れたのは分かった。


懐かしい温度に、口の端が上がる。


「俺も……逢いたかったよ」


伏せていた視線を向ければ、形容しがたい表情が目に入った。


今どんな気持ち? 何を考えてる?


……なんでもいい。なんでもいいよ。


悲しそうで、苦しそうで、それでも愛しそうにあたしに触れる彗が言った言葉は、きっと嘘じゃないと思うから。


ねぇ、だから、彗?


これから少しずつ、お互いの空白の時間を話そうね。


ゆっくりゆっくり、話してあげる。


「やっぱ彗、昔からだけど体温高いね」

「……そう?」


頬に触れる彗の手にすり寄ると、中指か人差し指で肌をくすぐられた。こそばゆくて身をよじると、息使いで分かる程度の彗の笑み。