「ひっ……!」
おばさんが口を覆い、小さな悲鳴をあげる。俺の左手首から、ポタポタと真っ赤な血が滴る。
「何をバカなことを……やめないか!」
もう一度カッターを手首に当てた俺に、おじさんが声を荒げる。
切ろうとした時、颯輔さんがカッターを取り上げた。そのカッターから、カチカチと刃物を出す音が聞こえ、颯輔さんはおじさんたちに近寄る。
「……あなた達は、何も感じないんですか? こんな小さな刃物で自分の体を傷つけている彗の痛みが、分かりませんか?」
「くっ、来るな!」
「分からないでしょうね。遺産だ金だと言われ続けて、自分の存在理由が分からない中、それでも必死に生きようとした彗の痛みなんて……ね?」
颯輔さんはおじさんの目の前まで詰め寄り、カッターを地面に落とした。
「彗の生きたいという心の叫びを聞こうともしなかったあなたに、生きる価値はあるんですか? 幼い彗から家賃なんて取ったあなたに、金を貸せと言える権利があるんですか?」
――グッと、唇を噛んだ。颯輔さんの大きな背中が、歪んできたから……。



