僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「黙れ狂人が! 貴様に話す必要などないっ」

「っ!」


狂人という言葉に言い返そうと身を乗り出した俺を、颯輔さんが止める。体の前に伸ばされた腕にグッと我慢して、背もたれに寄りかかった。


「あなた達は何か勘違いしてるみたいですね」

「は? 何を……意味の分からないことを」

「お金を借りたいのなら、頼むべきなのは彗ではなくて、俺ですよ?」


え……。


「……なんだと?」

「彗の遺産なら、俺の手元にありますからねぇ。ほら、弟が亡くなって真っ先に彗を引き取ったのは俺でしょう? 彗が俺に預けたんですよ。他の親戚に引き取られる前、彗は少しの遺産だけ持って行っただけですから」


おじさんは目を見張り、口を閉ざしてしまった。颯輔さんは珈琲を飲んで、視線だけで店内を見渡してるようだった。


「……そういうことで。借りたいのなら借用書を書いてくださいます? もちろんどちらかが保証人になって頂きますよ」


笑顔のまま話を進める颯輔さんに、おじさんとおばさんは困惑している。


……きっとどちらも、保証人にはなりたくないんだ。俺から金を借りられれば、それっきりだったはずだから。


借用書なんて言葉すら考えたことなかったんだろうなと思う。


ふたりのうちどちらかが保証人になったとしたら、確実に借りたほうは逃げる。


ほら……なすり付け合いの始まり……。