「とりあえず入って入って!」
玄関から廊下に脚を踏み入れ、彗を家の中へ招く。
小さく「おじゃまします」と言いながら靴を脱ぐ彗を見遣って、一直線の廊下を歩いた。
「……綺麗だね」
「そりゃあねー。誰も住んでなかったし、綺麗じゃなきゃおかしいでしょ」
言いながらリビングに続くドアを開ける。
「部屋はどこがいい?」
「凪の部屋はど、こ……」
あたしに続いてリビングに入った彗は、僅かに目を見開いた。その表情で驚いたということぐらい分かったけど、あえて何も言わない。
リビングには既にソファー、テーブル、テレビが置いてあって、まだまだ余裕がある。
ダイニングキッチンもバルコニーも大きいし、驚くなというほうが無理かもしれない。
「……広いね」
「でしょー? ここにひとりでは住みたくないよ」
そう笑った瞬間、陰る彗の顔。あたしを見つめる瞳の中に映える感情は、よく分かってるよ。



