◆Side:有須
「あ、彗……」
洗面所に入ると、歯磨きをしている彗がいた。鏡越しにあたしの姿を確認した彗は、歯ブラシの動きを止める。
「……ありふもはぁみはぁひ?」
「あははっ! なんて言ってるか分かんないよっ」
あたしはピンク色の歯ブラシを持って、彗を見上げて笑った。彗はじっあたしを見てから、黄色いコップに水を入れて口をゆすぐ。
「……似合うね、リストバンド」
彗は手の甲で口を拭い、目を細めた。優しい薄茶の瞳が洗面所のオレンジ色の証明を吸い込んで、キラキラ輝いている。
思わずドキッとしてしまい、慌てて歯磨き粉を手に取りキャップを開けた。
「……有須も、いろいろありがと」
「へ?」
感謝される覚えのないあたしの視界いっぱいに、ふわりと優しい笑顔が広がる。
「……凪に伝えてくれて、変わらず接してくれて……ありがと」
「うっ、ううん!」
ドキドキと、鼓動がうるさい。
彗はかっこいいから、あんまり間近で話すと顔が熱くなるよ……。



