「……負けんなよ、彗」
伸ばした手を彗の頭に置いて、金茶の髪をグシャグシャと撫でた。
「絶対負けんな。負けそうになったら言え。助けてやっから」
俺の手を黙って受け入れていた彗は、垂れ目がちな瞳で俺を見上げる。
「……へい……兄貴」
「ちょ、かわいいからやめろ!」
「ははっ」
グシャグシャになった髪を気にもとめず、彗は笑った。それがあまりにも自然で、素直で、胸の奥がじわりと熱くなった。
俺も笑い返して、灰が長くなった煙草を灰皿にグッと押し消す。
……負けんじゃねぇ。
理不尽な大人に、理不尽な世の中に、屈伏なんかすんじゃねぇ。
もし、またアイツらが来て。彗を傷つけてまでも従わせようとしたら、俺は黙っちゃいない。
この家を、この場所を荒らすというなら、俺は全力で潰してやる。
立ち上がる気力すら、二度と湧き上がらないくらいに。
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