「もう! いつまで喧嘩してるの! ほら凪、好きなだけかけていいからっ」
「有須! 好き!」
「いや、そこは止めろよ」
「そっか! 凪っ、塩コショウはほどほどにしなきゃダメだよっ」
「えー!? 味濃くないとやだし! ねぇ彗っ」
有須から野菜炒めを受け取った凪は、キッチンで味噌汁の椀を持つ俺に同意を求めた。
「……食べられれば、なんでもいいと思う」
そう答えると、凪は不満げな顔をする。
「何それ。彗はあたしの味方じゃないわけ?」
「は? 彗は俺の味方だっ」
「はー!? あたしだからっ」
「俺だっつうの!」
また始まった……。せっかく有須が止めてくれたのに。
……でも、本当は嬉しいんだ。
俺の過去を、俺の秘密を知っても、誰ひとりとして変わらず接してくれて。まるで俺はここにいていいんだと言われてるみたいで。
嬉しくて幸せで、気を抜くと涙が出そうで……。そんなこと恥ずかしくてできないから、いつも通りに振る舞うんだ。
俺は喧嘩する凪と祠稀の声を聞きながら、黙々と味噌汁をよそってテーブルに運んだ。
.



