◆Side:彗
まだ夕方なのに周りが暗く見える。窓から光が差し込んでいるのに、影ばかりが目に入った。
気分が悪くなってきてカーテンを閉めると、左手首が視界に入る。淡い水色のラグランTに滲む、紛れもない、自分の血。
「……」
薄暗くなった部屋で、静かにテーブルの前に座った。
……凪にバレた。ほんの、1年前の生活が。
祠稀にも有須にも……きっとあの人たちは、ベラベラ喋ったに違いない。
両親がいないこと、親戚の家を転々としたこと、俺に遺産が残ったこと。その遺産を、狙ってる奴らがいること。
知られたくなかった……。
同情されるかな。かわいそうって目で、見られるかな。孤独だと、思われるかな……。
俯いて左手の袖を捲ると、右手で弱々しく手首を握る。少しだけ、痛みを感じた。



