僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「彗!! 手、離してっ!」


駆け寄ったあたしは彗の右手を掴むけど、ビクともしない。どんなに力を入れても動かない。


―――やだ、やだ。なんで……。


「……彗っ」


見上げても、横を向いて俯く彗の顔は前髪に隠れて見えなかった。祠稀と有須の視線を感じながら、あたしは涙目で彗の右手を握る。


「お願い彗……手を離して……」


よっぽど強く握ってたんだ。爪も立てていたのか、長袖の生地にはジワリと赤い血が滲んでいた。


こんなになるまで……。


ズキン、ズキン、と頭も胸も体中痛む。


「……彗……」


彗の右手が、重ねていたあたしの右手をそっと掴んだ。


ぶらんと力なく垂れた彗の左手首には、やっぱり生地に血が滲んでいて、痛々しい。


「……ごめん。騒がしく、して……」


聞き取りにくいほど、小さな声で喋る彗。あまりにも弱々しいその声に、緩く首を振った。