僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「死にたくねぇなら帰れ」


顔を上げると、祠稀は彗の前に立ちはだかって、おじさんの胸ぐらを掴んでいた。その光景に、涙が出てくる。


「な、にをするんだ……っ」

「はあ? 帰れって言ってんだろうがよ」

「祠稀……」


弱々しい声で名前を呼んでも聞こえてないのか、祠稀は胸ぐらを掴んだままおじさんを無理矢理引っ張って、廊下へ追いやった。


「テメェも早く出てけや!!」


おばさんは体を揺らし急いで立ち上がると、おじさんのそばへ駆け寄った。


きっと祠稀は廊下に立ち竦むふたりを物凄い形相で睨んでいる。おじさんもおばさんも、顔を青くしていた。


「帰れ。今すぐ」


言葉を発さず動かないふたりに苛立ったのか、祠稀はダンッ!と壁を叩いた。


「出てけっつってんだよ!!」

「……っ彗、また改めて来るからな!」

「二度と来んじゃねぇクソが!!」


逃げるように玄関へ走ったふたりに、祠稀は怒鳴り散らす。バタンッと玄関から音がして、あたしたちの家は静寂を取り戻した。


重苦しい空気に、押し潰されてしまいそうだけど……。


祠稀は苛立っていて、有須はソファーで背を丸めていた。