僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ



「家に帰ってこない日はネットカフェに寝泊まりしたらしいな。深夜に街中をうろうろしてたら、あの女の院長に声をかけられたんだろう? 確か、冬だったか?」

「……」

「入所の手続きも回避して、一時的に保護してもらったらしいじゃないか。適当に作り話でもして、同情でも引いたのか? 随分うまくやったな」


――やめて。そんな話、聞きたくない。


「……まあ、お前がどこで何しようと関係ないが。ここまで調べるのにどれだけ金がかかったと思ってるんだ? 置き手紙だけ置いて出て行くなんて……聞いてるのか、彗」


俯いて、グシャッと前髪を握る。悔しくて、悲しくて、涙が出る。


どうしてあたしは、彗に会いに行かなかったの。



「帰れよテメェら」


あたしの後ろにいた祠稀がドスの効いた声を出した。


「ベラベラうるせぇんだよ。彗はテメェらの財布じゃねぇ」


俯いていたあたしの視界に、黒いマニュキアを塗った祠稀の足が見える。