黙ってしまった彗に、おじさんは信じられないことを言い出した。
「中3になってから、たまにしか帰ってこなくなったと思ったら勝手に家を出て……どれだけ心配したか。私たちは本来三年間世話をするつもりだったのに……残りの1年分の家賃くらい、払えただろう」
有須が口元を押さえて、力が抜けたようにソファーに座り込んだ。その瞳は、涙に濡れているようにも見えた。
……彗……嘘でしょう? 家を出たくなるくらい、追い詰められてたの? 3年間……どんな思いで……。
彗の背中を見つめながら、あたしの体は震えていた。
さらに、知らなかった事実があたしの耳に届く。
「調べたが、家を出てからは暫く施設にいたそうだな」
え……施、設……?
「……彗? ……本当に?」
向けられた背中が、振り向くことはなかった。
嘘……嘘……。本当に、施設にいたの? いつから? なんで? なんであたしに、連絡してくれなかったの……。
……どうしてあたしは、気づかなかったの。



