「お前は育ててもらった恩を忘れたのか、彗。中学に入ってから、住居を与えてやっただろう」


押し付けがましい言葉に、彗は低音の声を絞り出すように口を開く。


「……育ててもらった覚えなんてない。2年分の家賃は払ったでしょ」


家賃!?

この人たち……彗に家賃を払わせてたの? 中学って……13歳の時から……?


呆然とするあたしを余所に、おじさんは途切れることなく話を続ける。


「家賃の話をしてるんじゃないんだ。金を少しばかり貸してほしいんだよ、彗」


……信じられない……信じたくもない。こんな人の下で、彗が暮らしていたなんて。


小学生の時は……? 別の親戚の人の家にいたんだよね? まさかその頃も、家賃を払ってたなんてことはないよね?


でも、遺産をよこせって言われたことがあるって……それを言ったのはこのふたり? 別の親戚?


彗はぎゅっと手首を握っていた。見て分かるほど、力強く。