「帰って。二度と来ないで」


彗はそれだけ告げて、自室に戻ろうとする。だけどそれを、おじさんが制した。


「っ離せ!」


手首を掴まれた彗は声を荒げ、おじさんの手を乱暴に払いのける。


「……まだそんなことを」


彗は掴まれた手首を抑えて、おじさんを睨んだ。


「……醜い奴だな、本当に」

「っちょっと!」


今度はあたしが声を出すと、おじさんは煩わしそうにあたしを見遣る。


彗が醜い? ふざけないでよ。彗の財産しか目当てじゃないあんたたちのほうが、よっぽど醜いじゃん。


「今すぐ帰って! 本当に通報するからね!!」


声を荒げるあたしに、おじさんは溜め息をついた。


「私たちはただ少し、金を借りにきただけだ。借りれば大人しく帰るさ」


ぬけぬけとよく言う。


おじさんはあたしから視線を逸らし、まるで我がままを言う子供をあやすかのように彗を見据えた。