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深夜1時。かれこれ2時間寝付けず、ひたすら寝返りを打っている。


諦めてベッドから起き上がると、隣の祠稀の部屋から物音がした。


……外から?


気になって部屋から出ると案の定、リビングに面する大きなバルコニーに祠稀の姿があった。手すりに肘を乗せて、割と綺麗な夜景を眺めている。


コンッと軽くガラス張りの戸を叩くと祠稀は驚いた顔で振り向き、俺を確認すると微笑んだ。


「……何してるの?」


カラカラと静かに戸を開ける。祠稀は手すりに背を預けて何かを差し出した。


「お前も吸う?」


見ると、祠稀の手にはセブンスターと書かれた煙草があった。その銘柄はキツいイメージがあって、美味しいのかなと頭の隅で思う。


「……煙草、吸ってるんだ」

「まあな」


ライターを取り出して火をつける姿に違和感を感じないのは、祠稀が大人びた顔をしてるからだろうか。


「めずらしいな、彗が夜中起きてるなんて。寝付けねぇの?」


祠稀が吐き出す紫煙が、ゆらゆらと闇に溶ける。