「誰かの携帯鳴ってない? バイブの音する」
夕食を食べていると、凪が眉を寄せた。耳を澄ませば、リビングのどこかに置いてある携帯が振動しているみたい。
「あたし部屋に置いてるから……」
「俺マナーモードじゃないから違う」
有須と祠稀が順に言って、じゃあ俺の携帯かなと思う。
持っていた箸を置いてリビングテーブルに向かい、カーペットの上に落ちていた自分の携帯を拾い上げた。
……やっぱり俺だ。
見ると画面に1通の未読メールが表示されている。ソファーに腰掛け、カチッとボタンを押した。
「……っ」
送信者の名前が目に入り、内容を見ないまま反射的に携帯を閉じる。
ぐらりと揺れた視界。携帯を握る手に込められる力。脳裏を掠める、忘れたい記憶。
なんで今さら、この人が……。
「彗、誰〜? 友達?」
「彗がメールって珍しくね?」
ぐるぐると考えていると、後ろで夕飯を食べてる3人の視線が背中に突き刺さる。
「……」
ぎゅっと瞼を強く瞑って、眉を寄せた。
なんてことない、こんなこと。
気持ちを落ち着かせてから立ち上がり、振り向いた。
「……中学の時の友達から」
「そなの? よかったね」
嬉しそうに笑う凪に罪悪感を覚えながら、携帯をジャージのポケットに納め、再び夕食を食べた。



