「こんな遅くまで探してたの?」

「……すみません。もう寝ます」

「いいのよ、遠慮しないで。区切りのいいとこまでいったら、ちゃんと寝るのよ?」

「……はい」


へたくそでも笑えばいいのに、俺は無表情で返事をした。


それでも院長は微笑みを浮かべ、唯一パソコンがある部屋の前から去っていく。


ホッとする自分に気付いたけれど、そのことを深く考えるのは避けたかった。


今は再びパソコンと向き合って、画面を見つめることが先だ。


「……」


募集要項と一文を飽きることなく繰り返し見ていると、どんどん魅力的に思えてきた。


高校へ入学する前に自ら新しい環境を作ろうとしていたのだから、余計に。


どうしてと聞かれたら、うまく答えられないけど。


変わりたい。


どうしても、“今”から抜け出したいのかもしれない。



一度は諦めたはずなのに……まだ足掻く力があったのかな。