「ヒロ、着いたで」
シンゴさんであろう声が言う。
え……兄ちゃんもいるん?
そう思ってると、誰かが「おう」と言って近づいてきた。
この声は
あたしの大好きな、人の声。
どういうこと?
意味がわからん……
「おい、ヤス……」
兄ちゃんの低い声。
な、なんか怒ってる……?
「な、なんすか。ヒロさん……」
「誰がお姫さま抱っこしてこいって言ってん。俺もしたことないんやぞ……」
え……
「あ、すみません!やけどヒロさん、ミチもヒロさんにお姫様抱っこしてほしいって言ってましたよ。」
あ、アホヤスー!!
余計なこと言いやがって!!
…だけど。
あたしの耳には、信じられない言葉が飛び込んできた。
「そういう素直になれへんところも可愛いけどな」
顔は見えへんけど
そう言った兄ちゃんは、めっちゃ優しい顔で笑ってる気がした。
「や、ヤバイっす、ヒロさん!その笑顔鼻血ものっす!」
そう、ヤスも言ってたし。
やけど、兄ちゃんはすぐに低い声に戻ってヤスに言った。
「おい、ヤス!ミチの初めての相手は全部俺なんやぞ!やのに、お姫さま抱っこの初体験はお前とか許さん!」
あたしの体は、ヤスの腕の中から強引に違う腕の中に連れていかれた。
この匂いは
よく、知ってるんや。
「兄ちゃん…」
好き、大好き。
あたしは兄ちゃんの胸に顔を寄せた。
*

