部屋の中はいろいろと散らかっていて、洗い物もそのままだった。



『ごめん、何か考えてたら家の事とか手につかなくて・・。』



彼女が恥ずかしそうに片付け始める。





『・・そのままでいいから。近く来て。』





そんな彼女を後ろから抱きしめる。



久しぶりの体温。



文子の髪のにおい。




心地いい。




心地いい——‥





そのまま重なり合った。





*  *  *  *





腕まくらをしながら、周りを見回す。



黒白以外は淡い色でまとめてある家具。



やはり大量にある本たち。


机の上に目を移すと、大量の原稿用紙。

床には丸められたものがたくさん落ちている。



『文子、これなーに。』


『ん〜?』


俺が尋ねるとけだるそうな声を出して顔を上げる。




『あーこれ。ちょっとね。』


『小説でも書いてるの?』


『・・ビンゴ。』


彼女は照れくさそうに布団で口を隠しながら続ける。



『こっちがホントの夢なんだよね。』


『小説家?ずっと教師になりたかったとかじゃなかったんだ。』


『うん。まぁ教師やって君に出会えたからいいんだけどね。』


『はは。でも初耳。それどんな話?』


『内緒ー。へへ、なんか30にもなって夢とか恥ずかしいけどね。』

『そんなことないよ、それだけ書くことが好きなんだよ。応援する。』



そういっておでこにキスをすると、文子は少女のようにはにかんだ。