自分の中で浮かんだ考え方に鳥肌が立った。






いい、機会じゃないのか?




俺じゃない違う誰かと出会って恋をして、安定を手にするために彼女を送りだす機会。



文子も今までも心のどこかでは俺相手じゃ未来に不安があったはずだ。





俺には、金も時間も年齢も知識も経験も足りない。


あるのはただ、愛だけ。


行き場を断たれかけている愛だけが、俺の全てから溢れ出している。











『はい。』



奈美さんが、黙りこくっている俺にハンカチを渡した。



『・・・・・泣いてませんけど。』



『これから泣くでしょ。』



『・・泣かないし。なんすか、ガキ扱いやめてください。』




『はぁ?誰がそんなこと言ったよ、人間悲しけりゃ誰でも泣くのよ!当たり前でしょーが。そんなことにこだわってると本当にガキとして扱うわよ!』



早口で一気にまくしたてられた。

なんかすごい女だな。






喧嘩する気はないので、とりあえず受け取る。