俺は文子を傷つけた奴らに従う身か。
今まで一人で生きてきたつもりでいたけれど、
俺ってこんなに無力だったっけ……?
鍵はもうないのに、自然と足は屋上へと向かう。
扉はもちろん開かない。
しかしガタガタと、何度もドアノブを引っ張る。
向こうに誰もいないのはわかっているのに、
重くて重いこの扉が、文子と自分を隔てているような気がしてならなかった。
意地になって引っ張り続けると、ノブが鈍い音をたててとれた。
反動で尻もちをつく。
かすかな期待を込めて他の金具をひっかけてドアを引っ張る。
今度はびくともしなかった。
『………ちくしょ……。』
息を切らして座りこむ。
会いたい。
会いたい会いたい。
試しに一声、彼女の名前をつぶやいてみる。
耳をすませても返事はあるはずもなく、
何階も下の生徒の笑い声がかすかに響いてきただけだった。
次第に視界がぼやけていく。
何かが溢れて、手の甲にぽたっと落ちる。
『……ガキでごめん………。』
しぼり出した声は、君に届いただろうか。
頬をあてた扉の表面はざらざらとしていて、
ただただ冷たかった。


