俺は振り返って目を見開いた。
周囲のざわめきも消えた。
『えー、正確に申しますと、諸事情により“移動”したのです。
その事情については詳しくは言えませんが、
彼女は教師として望ましくないことを犯しました。従って離任式にも出席を許さなかったのであります。ご理解ください。』
徐々に再びざわつき始める周囲。
ショックを受ける声が飛び交う。
俺は地面一点を見つめたまま動けなかった。
バレたんだ。
俺たちの事。
いつ?
どうして?
俺は何も知らない。
何もきいていない。
俺に出来ることは?
何もなかった…?
『‥‥‥‥‥‥‥。』
今の俺は、文子の恋人とかそんなものではなく、ただの生徒なのだと感じた。
高い朝礼台から教師達に見下ろされながら、その他大勢の群れの中で、
そう感じた。


