それから、その屋上で会うのが日課になった。
帰る度ワカマツにじろりと見られたが、特に気にしなかった。早く帰ろうが遅く帰ろうが、咎められることには変わらないからだ。
ある日先生が、俺たちが会うくらいの時間を『かわたれ時』というのだと教えてくれた。
俺はかわたれ時が大好きになった。
毎日のように夕日に向かって並んで座り、
語ったり泣いたり、黙ったり考えたりした。
どんなに施設で殴られても、その時間を思うと耐えることができた。
それどころか、屋上で見つけた光はあまりに大きくて、
次第に俺を変えていった。
『おまえ最近どーしたよ。』
『ん?』
琢磨が不思議がって聞いてきた。
『や、なんつーかここんとこ人間らしくなってきたような‥よく笑うし。
今日とか女子が“高瀬君がおはようって微笑んでくれたーっ”って騒いでたぜ?』
『はは、別になんもねーよ。つーか俺人間だし。』
『ふうーん。』
琢磨がからかうような顔をしていると、文子先生が教室に入ってきた。
一瞬目を合わせ、そらす。
急に鼓動が速くなる。
『はい席ついてーっ。今日は前くばったプリントの続きからよねー』
心なしか先生も、笑顔が自然になった気がする。


