しばらくして日が沈み、落ち着いてから上を見上げると、先生の頬にも涙の後が残っていた。
『どうして。』
それを指でなぞると、先生が微笑んだ。
『どうしてかしら。』
自分のために、泣いてくれる人がいる。
そんな事も初めてだった。
俺は先生から少し離れてゆっくりと尋ねた。
『俺にも、先生を抱きしめる権利はありますか。』
すると先生はゆっくりとうなずいた。
『私はもうずっと前から、ここであなたを待っていたのよ。』
ぐいっと彼女をひきよせ、細い体を包み込む。
すると先生が小さな声でつぶやいた。
『言っておくけど、私は同情でここまでする女じゃないからね?』
言葉の意味を理解し彼女の顔を見ると、微笑みの中に少女のような恥じらいが見え隠れした。
俺はそれを壊してしまわぬようそっと頬に触れ、
ゆっくりと唇を重ねた。
先生の全てが、愛しかった。


