重い扉を開くと、視界はだいだい色に染め上げられた。



思わず酔いそうな景色だった。




その中でこちらに背を向けぽつんと体育座りをしている女を、ぼんやりと見つめた。




彼女が振り返った瞬間、秋の風が俺を抱いた。




彼女は、現実から切り離れたこの場所の唯一の住人であるかのように見えた。





『高瀬くん』




一瞬、夕日がしゃべったかと思った。


そんなゆったりと温かい笑顔で呼ばれた。



吸い込まれるように近付き、彼女の隣へと腰をおろした。