終業の鐘が鳴り、挨拶をして先生が廊下に出て行くと、俺はとっさにそれを追いかけた。

何をしようというわけではない、身体が勝手に動いたのだ。

呼び止めると、少し先生は驚いた顔を見せた。


『・・先生。ここの訳よくわかんないんすけど。』



『あ・・うん、あーこれはね‥』





先生の顔がぐっと近くなる。



透き通りそうな白い肌。

長いまつ毛。

切れ長の目。

厚みのある唇。

彼女の吐息がこちらに届きそうだった。




『〜ってとこね。わかった?』



『わかりました。ありがとうございました。


‥‥‥‥‥‥‥あと‥。』




先生の目を見る。




『先生は‥大丈夫ですか。』




『‥‥‥‥‥‥‥え?』


彼女は明らかに戸惑っていた。


『あっ‥いやっ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥何でもない。
うん、何でもないです。
じゃぁ、ありがとうございまし‥』
『高瀬くん。』



『‥‥‥‥?はい。』



『私はあなたの方が心配よ。』





『‥‥‥‥‥‥‥‥‥。』






『あなたの目、ビー玉みたいね。』





『え?』






『キレイだけど、生きてない。』






彼女は切なそうな顔でそう言って、立ち去った。






『—————‥‥‥。』







茫然と背中を見送る。






すると先生は途中で何かを落とした。






近づいて拾ってみると、細長い変わった形の鍵だった。






『‥せんっ』


追いかけようとして、やめる。






先生が振り向いて、いたずらに笑ったからだ。







“屋上に来なよ”




そういう、
メッセージだった。