『・・お前それどうしたん?』


ボタンのあいたシャツの隙間からわずかにあざが見えてしまい、すかさず琢磨に聞かれた。



『昨日の帰り変な奴らに絡まれたんだよ、まぁたいしたことない。』



とっさにそう答えたが、少し目を泳がせてしまったので勘のいい琢磨の事だから何か気づいたかもしれない。
俺は苦し紛れだが話題を変えることにする。


『あ、それよりお前こないだ言ってた子どうなったの。』

『え?・・あぁいっやー、オッケーもらったぜよ?はっはっは。』

『マジか、お前本当に女には苦労しなそうだな。』

『いやいや、俺だって人並みに悩んでるんだぜ?あ、お前にも紹介してやろうか!』

『いや・・俺はいいよ。』

軽く笑って断ると、琢磨は少し真面目な顔をして声のトーンを落として言った。



『・・フミちゃんさ、大変らしいぜ。』


『おい、だから俺そんなんんじゃないって。‥てか大変て?』


『家が大変だとか。それになんか職員室での虐めが半端ないらしい。教頭とかにセクハラされてんの見た奴もいるって誰か言ってた。』


『‥‥‥‥‥‥‥‥。』


『まぁ・・ただの噂だけどな!』







琢磨がいつもの表情に戻ったその時だった。




『なんの話ー?』




『ん?うわっ』




振り向くと文子先生。




『いやっ教頭のカツラの話を‥。』



『なんだよそれ!』
(中学生か俺たちはっ)と小声で制する。


『あ、やっぱあれバレてるんだ!ふふ、
さーさ座って座ってっ。』


先生が教室に入るように促し、いつものように授業が始まった。



俺は彼女の一挙一動を見つめた。



ずっとひっかかっていたんだ。


どんなに楽しそうに微笑んでいても、
目だけはいつも泣きそうになっている事。