その名を聞いた瞬間、だるそうにしていた母親の顔色が変わった。


手や唇がかすかに震えている。





『なんで……あんた‥その名前知って…』




いつもの母と一変した態度に、母にとっても彼女はとても大きな存在だったのだと悟った。




『偶然聞いたんだけど・・
ねぇ、お母さんが高瀬とそういう関係なら、フミコさんて何なの?』





母は幾分動揺して、目を逸らして言う。


『・・なんであんたにそんなこと話さなきゃいけないの。
あんたは嘉人のただの生徒でしょ、噂の材料になるだけ…』
『好きなの。』



『‥は?』





『私、高瀬が好きなの。』




そう言って、今までの屋上での出来事を話した。





母は目を見張った。



『‥ウソでしょ?』




『本当だよ。‥私、あの人の力になりたい。
お荷物だけじゃ嫌なの。』




母は信じられない、と言った様子で足を組んでソファに座った。