一限終了のチャイムが鳴ると、私達は廊下に移動する。

「あー学校始まって二日目から授業ってどうよー実際。」

「思いっきり睡眠学習してやったよ。」

「ちょ、アコ襟によだれまだ付いてる!」

「あはは。」


廊下の窓からは、この学校で一番大きな桜の木を眺めることができる。
私はしばし会話を離れて見入っていた。


桃色があまりにはかない。
はかないからこそ美しい。


じゃぁ世界で一番美しいものって何だろう。




そんな事を考えていると、マキにデコピンをされた。


「っいった!」

「まーた麗魂ぬけてるー。」

「あ、ははごめんごめん!」


私は口角をきゅっと上げて高い声を出す。

「あ、桜といえばさー昨日校長がめでたい事になってたよね。」

「ね!ふふっ。」

横からアコがマキに話しかける。

ユリが何か思い出したように、可愛らしく笑う。


「えーなにー?」


「や、単にハゲの上に花びらが乗っかったんだけどさ。」
「あいつ汗かいてたから風ふいてもそれが飛んでかねーの!」
「ぷ」
「ずっとくっついててね、さりげなーく教頭がとろうとして…」
「そしたら校長気づいて」

私はその様子を想像しながら、たえられない、といった風に笑う。

話の続きを聞こうとした時、ふとアコの肩越しに廊下の先から歩いてくる人物が目に入った。
それに気づいたアコが話を止める。

3人が振り返って私の視線をたどった。