* * * *



『香坂。』


キャリーバッグをひきずり、高瀬の部屋を後にする私を、彼が呼び止め何かをひょいっと投げた。

受けとめた手をひらくと、鍵があった。

この部屋のではない。
細長い、変わった形の‥



彼を見上げる。

『遅くなったけど、誕生日プレゼント。』

『————————‥っ』


いつか、彼を支えたいと願ったあの日、決意して離れたあの日の自分を、抱き締めてあげたい。



ねぇ‥こんな瞬間、想像できた?


彼は、『やっと渡せた‥』と、子供みたいな笑顔を見せた。

つきあがる喜びに、気付けば私も同じ顔をしていた。