わかりやすい展開の中、繊細な描写を交えつつ淡々と進むストーリー。

時々見える文子さんの心の中に、何か傷口に寄り添うものを感じた。



『‥高瀬と、文子さんみたい。』



そう言うと、彼は『そう言うと思った』と言って続けた。


『俺とお前だ。』


『お前はミサキなんだ。』


高瀬は私を見ている。

夕日でもなく、過去でもなく、今、私を、見ている。

声も目も表情も、隙間なく私に向かっている。



『‥愛してるとでも、言うの‥‥?』


それであなたは救われたと‥‥
私も救われると‥




『知ってるくせに‥私信じられない。そんな言葉で食い止めようとして‥』


そう言うのをキスで遮られる。


『信じられないなら教えてやる!俺じゃない、お前の心の中を探してみろよ!
俺がこうしても、もう湧き出てこないのか‥?』

『やめて!混乱させないで』

『俺に対してじゃなくてもいい、お前の中に確実にあるソレは、本当にいつかなくなるものか?なくなってしまったものか?!』

『やめて!!』

『本当に本当にそうか、そのうちわかる、だからもう少し待ってくれ‥』

肩をつかんで必死に訴える高瀬を突き離す。

彼の目に浮かぶものが光る。

————あぁ、やっぱり、
綺麗だ‥————————



その時、玄関の扉が再び開いた。