ふわり、ふわり、
雪は着地する。


その上を通り過ぎた車が落とした傘をはねていく。



もう、軽蔑されようが、嫌われようが、どうでもいい。

そんな事を考える余裕も、これ以上傷つく心もない。



彼はしばらくして、私を持ち上げ、歩き始めた。






* * * *


高瀬のアパートは小さくて、建ててからの年月を感じさせた。

さびついた階段を黒い革靴がカツカツと慣れた様子で登っていく。


薄い扉をひくと、ちかちかと寿命の短そうな蛍光灯が灯る。

必要最低限の家具だけ置かれた簡素な部屋が照らされる。


父親が家に入って行った時の事を思い出す。


同じ匂い。


・・・・失った者の、部屋。






ベッドにおろされ、タオルで顔や髪をふかれる。



手を引っ張られ風呂場に入ると、熱いシャワーを足にかけられた。


出て行こうとする彼の手をひくと、
「いいから温まれ。」
と、ふりほどかれた。