『わり‥』
そう言って離そうとする彼に今度はこちらからしがみつく。
何度か押し返そうとされたが、次第にその力は弱くなる。
彼の胸に顔をおしつける。
高瀬の匂い。
声を絞りだす。
『‥一度知った温度っていうのはね‥‥忘れられないんだよ。』
昔の両親、仲良かった頃のクラスメート達、その他もろもろ、自分を拒絶した人々の笑顔を思い出す。
『もう、行かないで‥ください。』
あの日の決意も、恥もプライドも今の私にはなかった。
『抱いて。』
言ってしまった。
『それができないのなら、今、私の首を絞めて殺して。』


