人が多くなってきた。
ガヤガヤと騒がしいほうへつづく道。
なんとなくあっちにはいきたくない。
そう思って一つはずれた道をゆく。
その時、雨が雪に変わった。
見上げると、それが優しく私の顔をなでる。
『‥‥‥‥‥。』
“高瀬に会いたい。”
突然そう思った。
いや、もっと前から、ずっとずっと、思っていたかもしれない。
雪を仰ぎながら歩いていると、また誰かにぶつかった。
通り過ぎようとしたら、ひきとめられた。
外国人の男だった。
深く帽子をかぶっていて、肌は黒く、がたいがいい。
『お嬢サン、悲シイノ?』
彼は私に尋ねた。
『悲シイノ、無クナル方法、知ッテル?』
私は首を横にふる。
『お金クレタラ、教エテアゲル。』
そう言って彼はポケットから小さな袋を覗かせた。
『魔法の粉ダヨ。』
彼は笑った。
私は財布から一万円札を取出し、渡した。
もう、どこまで堕ちようが同じだ。
粉を受け取ろうとしたその時だ。
ぐいっと誰かに腕をひっぱられた。
私を連れてずんずん進んでいく後ろ姿は、待ち望んだあの人だった。


