「ねぇママ、なんでパパとケンカしちゃったのお?」
「麗はそんなこと気にしないでいいの。」
「だって‥アミちゃんのパパとママはもっと仲良しだよー。」
「もう、うるさいなぁ。」
「ごめんなさい。・・じゃぁ、ママはなんでパパとけっこんしたのー?」
「———‥‥。」
「なんでー?」
「‥あんたができたからだよ。」
———“ドンッ”
人にぶつかって、はっとした。
どれくらい私、歩いていたんだろう。
見回すと、知らない景色が広がっている。
ま、いいか。
私の目的地には、どこからでも飛んでいけるから。
雨が、下着にまで染み込んでいる。
上着を着ていないのでひどく寒い。
でももう、すべて、どうでもよかった。
頬を濡らすものが雨か涙かも、知ったことではない。
* * *
「麗は本当にいい子だなぁ。」
「ほんとう?パパ。」
「将来、ママみたいに変な男に捕まっちゃダメだよー?」
「変な男って、パパー?」
「んー?さぁねぇ。」
* * *
「なんで麗ができたらけっこんするのー?」
「そういう決まりなのよ。基本的にね。産むために結婚するの。」
「けっこんて麗のためにしたのー?」
「そうだねぇ。」
「麗に会いたかったんだ!」
「そうだねぇ‥。」
「ねぇママ、どこ見てるの?」
「‥んー?」
「ママ、なんで悲しそうなの?」
「‥‥‥。」
「なんでー?」
「‥‥‥‥。」
「ねぇママ、なんでー?」
ねぇママ
なんで ?
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