母が声を絞りだして何か話しだす。
『‥あの人‥
ホームで会って‥‥。』
『うん。』
『“元気か?”って、っう‥私は顔も見たくなかったから‥無視して‥そしたら‥。』
『うん。』
『“俺の人生返せ”って、背中‥っ押されて‥っ。』
『‥うん。』
『死ぬかと思った、でもくいって後ろに押し戻されて、同時に‥‥ひっ‥‥ぐちゃって音‥あああの人の肉片‥‥‥っ。』
『わかった!
もう‥わかったから‥言わなくていいっ、言わないで』
『あぁぁぁなんでっ私がなんでこんな‥‥っ。』
『おかあさ‥私がいるから‥お母さん‥‥。』
懸命に背中をさする。
私は母が愛しかった。
子供みたいに泣く母が、誰よりも何よりも、愛しかった。
その母に、次の瞬間、思い切り突き飛ばされた。
尻餅をついて、彼女を見上げた。


