家に着くなり、母はぺたんと床に座った。


歳の割に細くて、頼りない小さな背中。


私がしっかりしなきゃ

なんだか漠然とそう感じ、夕食のしたくを始めた。

お互い食べる気なんてないと、わかっているのに。




まだ泣かない
まだ大丈夫

パスタをゆでながら必死に自分に言い聞かせていると、
ずっと黙っていた母親が、奇声をあげた。



私は思わず鍋を倒してしまった。
熱湯が足にかかった。


それを水で冷やすより先に、叫び続ける彼女に抱きついた。
背中をさすった。


もう涙をこらえるなんて不可能だった。

お母さん、お母さん、と私は繰り返した。


『あぁーーっ、あぁぁーーっ、ううう。』


こんな風に取り乱した母を見たのは初めての事だ。