動けなかった。
もう2回、聞き直し、もう2回、同じ報告を受けた。
頭の中が真っ白になる。
まばたきも呼吸も忘れた。
認識できるのは、奈美さんのすすり泣く声だけ。
『…っ…詳しいことはよくわかんないけど…っ、教室で…自分で頚動脈切ったって…
…っく…あんた…昨日から一緒にいたならなんでおかしい事に気づかないのっ…なんで…』
『———………っ』
俺は受話器を落として部屋を飛び出した。
無我夢中でゴミ校へ向かう。
ドクン
ドクン
心臓と呼吸の音がうるさい。
文子の笑顔と
奈美さんのセリフが
交互に頭に浮かぶ。


