それから文子の新しい教師生活が始まり、俺は文子のためにできることを探した。


1日5分でも電話をする。
会いにいけるときは会いに行く。
手紙を書く。



たったそれだけだった。

しかし彼女は『それだけ』を『十分』と笑った。
自分を幸せ者だと言った。



新しい学校の生徒達は、外見は確かにひどいが思ったよりも反抗的ではないらしい。

女で得をした、と笑って話している。

そして文子の担当したクラスでいじめにあってる子を救いたいという。



俺は頑張っている文子のもっと役に立ちたかった。

もっともっと、笑った顔が見たい。





そこで思い立った。


8月10日の文子の誕生日に、何かすごいものをあげようと。
そうだ、指輪とか。

8月の誕生石は、ぺリドット。
言葉は確か、相愛。

一生分の相愛を、その日、誓おう。



そうして俺は大学のためのバイトと平行して働くことにした。

勉強時間を削る価値はあるはずだ。