『・・・なぁ、文子の移動先の学校の名前、まだ聞いてないんだけど・・。』
『・・・・・・。』
俺がそう尋ねると、彼女は布団からするっと出て下着とシャツを着る。
『・・城●丘高校。』
そういって飲み物を準備しだす。
——・・城●丘高校?
城●丘高校って・・
『もしかして、『ゴミ校』とか呼ばれてる・・?』
『えぇ。』
彼女は俺に麦茶を渡し、平然とうなずく。
城●丘高校とは、どうしようもない不良とか、問題を起こした教師とか、そういう人間達が集まる場所として有名で、『ゴミ校』『廃棄物処理場』などひどい呼び名を持っている。
『・・・・・・な、そんなとこで文子やってけんのかよ。あそこ荒れた連中ばっかだし・・』
『やるしかないでしょ。』
彼女は大人の笑顔を見せた。
俺の前のではなく、以前学校で見せてた作られた端整な笑顔。
結局俺が何もできないのを、彼女はわかってるんだ。
そんな仕事しなくても、好きなだけ小説を書かせてあげたいのに。
俺は何も言うことができず、願いは宙に浮いたまま、
文子の不安だけがひしひしと、感じとられた。
こうして会えたこんな日にまた、彼女に笑顔を作らせてしまった。
俺たちの間にある見えない壁の存在を、壊すことはできなかったんだ。


