清冽(せいれつ)な夏の朝に、ボクは深呼吸して、自宅に向かい歩き出す。


 午前六時過ぎで、これから丸々二時間ぐらい仮眠を取って、即学校だ。


 ボクは本来なら来年度で四年生になるのだが、不幸なことに三年生をもう一年しなければならない。
 

 そのときは自主退学するつもりでいた。


 ボク自身、別に学校から卒業証書と学位をくれてやると言われても、どうでもいいのだ。


 いい加減なことをやっても卒業できてしまう人間が多い中で、ボクは正々堂々と大学を辞めるつもりでいた。


 それにボクも思っていた。


「愛海みたいに小説でも書いてみようかな」と。


 そっちの方では十分やる気があった。
 

 今という時代に何ら値打ちのない大卒という肩書きなど別に要らずに。


 そしてボクも講義やバイトの合間を縫って、小説らしいものを書き始めた。


 あくまで習作――練習作として。