真っ暗で、当然ながら誰一人としていない。


 ゆっくりと、しかし着実にボクは薄暗い建物内を点検し続ける。
 

 一応午前二時の点検が終わり、ボクは待機室へと戻ってきた。


 さすがに深夜のバイトは時給がいい分、きつい。


 こんな真夜中なんて誰もが寝てるはずである。


 それを押し切って行くのだから、疲れは溜まるのだった。


 だが、合間に倉田さんからいろんな話を聞いているうちに、ボクは世の中の実態が分かるのだ。


 ある意味、こういった労働も知恵が付くのである。


 単にきついだけのドカタなどとはまるで違って。


 そして夜が明け、ボクは倉田さんに、


「お疲れ様でした」


 と言って一礼し、ゆっくりとバイト先を出る。