「お前、もしかして留年確定とか?」


「そのまさかです」


「奨学金とか借りてるんだろ?」


「ええ」


「じゃあ、留年したら学費とかどうすんだ?」


「そのときはボクが学校を辞めます」


「その方が賢明かもな。俺も大学出てないし」


 倉田さんがそう言い、淹れていた濃い目のコーヒーに口を付ける。


 その後、一息ついて、


「――もうすぐ点検の時間だから、行ってこい」


 と言った。


「分かりました」


 ボクが頷き、警備員用の帽子を被って、ゆっくりと建物のあちこちを見て回った。