「軽い安定剤出しとくから、それでしばらく様子見て」


 診察してくれた中年の男性ドクターがそう言い、電子カルテにボクが悩んで話したことをパソコンのワープロソフトを使って打ち、事務の方にメールで送ったらしい。


 そして立ち上がることなく、次のクランケを診察する手筈を取る。


「まあ、医者の言うことなんかこの程度かな」とボクは見下げたような感じでいた。


 大概症状を否定しに掛かるのが、こういった医者――とりわけ精神科医――の仕事なのである。
 

 気休めしか言わないから、ボクも正直なところあまり信じられずにいた。


 だが、待合室で待っている愛海は違う。


 彼女は愛おしい人の一人なのだから……。


 何よりも、そして誰よりも。


 ボクは食後の薬を服用しながら、思い切って大学に舞い戻る気でいた。


 考えてみれば、大学もバイトもかなりサボっていたので、これを機に、と思ってだ。


 ボクは決意していた。