「隠す?」


「うん。デオドラント振って、誤魔化すみたいな感じでね」


「そんなに辛かったのね?」


「ああ。もう長いんだ。十七歳で発症してから、三年以上経つんだよな」


「きつかったでしょう?」


「うん。周囲の目が気になってしょうがなかったんだから」


「重病だったのね」


 愛海がそう言い、思わず目頭(めがしら)から溢れ出てきた涙をそっと拭う。


 まるで海辺で泣いた人魚を見るかのように、愛おしい感情が戻ってくる。


 本来なら、今自分が腹を割って話している貴重な存在の愛海を大事にすべきだったし、実際彼女にはこれからもいろんなことを打ち明けるつもりでいた。


 そして診察の時間がやってくる。


「大嶋さん、一番診察室にどうぞ」