法学部や商学部など一応定期試験はあっても、よほどのことがない限り、教授が通してくれる学部は学生自体に緊張感がまるでない。


 講義にも来なければ、大学そのものにも寄り付かないといった学生が多かった。


 ボクも愛海も文学部なので、卒業用件として三年、四年のゼミと、四百字詰め原稿用紙換算で七十五枚以上の卒論を書かないといけない。


 おまけに必修科目がやたら多かった。


 必ず単位を取らないと卒業できない科目があるのだ。


 三年ちょっと悠洋大の広いキャンパスにい続けて、ボクたちは留年している先輩たちをたくさん見ていたし、実際知ってもいた。


 ただ、愛海は毎回講義に欠かさず出てきていたし、ボクも辛うじて単位は落とさなかったので、このまま行けば卒業は十分可能だ。


 ボクたちは顔を見るだけで思わず嫌気が差してしまうような教官と顔を合わせることもあるにはあったが、それを除けば学生生活は楽しい。


 キッチンに立ったままの愛海が言った。


「……明日学校サボって、もう一回海見にいこう」